絵に描いた餅を食べる方法 -12-

ゲノムの配列にを叫んだノケモノ


ヒトゲノムプロジェクト…まさに途方もない計画であった。
30億塩基のATGCの配列を1日1000塩基ずつ読む。
単純に計算したら300万日…つまり一万年かかることになる
それが1980年代の現実だった。

当然当時の多くの生物学者は懐疑的であった。
(彼らが懐疑的なときは大体の場合、不思議と上手くいくように
 も思えるが、今回だけは違った。)

それでも少しずつヒトゲノム解読は開始される。
1985年に、日本、アメリカ、EUで開始されたのだ。

だが各国の状況は徐々に異なってくる。
日本では理化学研究所などで、手探りの解読が開始されはじめたのだが、
当時の日本政府は猛反発したのだ。そんなわけの分からないもの
金を出せるかと。
(日本の官僚制度で理系でももっとえらくなれるシステム作らんとヤバイだろ)

一方アメリカは国家の威信、America is No.1を元に大量解析を始めた。
国家規模での全面介入である。NIHやエネルギー省に渡された予算規模
実に3000億円。狂ってる。この国は何か狂ってる。
ただ実のところ、研究機関としてはSanger center(イギリス)が最終的には
もっとも大量のヒトゲノムを解読している。

事態が急変するのは1997年、セレラ・ゲノミックス社がヒトゲノム解読に
宣戦布告し、全面介入を開始したのだ。
セレラ社はいう。「目標の2005年にはこのままでは間に合わない!」

それに伴いアメリカやイギリスの解析速度もさらに増大する。
企業ごときに負けるわけにはいかないのだ、国家の威信を賭けて。

さて、この当時の状況を簡単に復習してみよう。人間は相変わらず断片的な
データしか読めない。そこで染色体を大まかに断片化して、酵母とかや
バクテリオファージの遺伝子とつなげてそのあと配列を読む。

この断片化というものがくせ者で、破滅の始まりでもあった。

セレラ社CEOクレイグ・ベンダーはそんなものコンピューター使って並べりゃ
すぐだぜHahahaとほざいていたが、やがてみんな愕然とし始める。

どこに、なにがあったか、わからない。
ヒト塩基配列は確かに読めた。しかしだ。配列の並び方が全然わからないのだ!
似た配列が多数あるから、オリジナルの位置がわからない。

それなのに1999年、ビル・クリントンがとんでもないことを言い出す。
2000年6月25日までに全ヒトゲノム配列を解析し終わると言い出したのだ!

…ふざけるなっ…!
…ふざけるな貴様っ…!
何も知らない傍観者がそれを決める権利が…ある…
それが合衆国大統領の権力っ…!

というわけでセレラとの全面対決でヒートアップするアメリカとEU。

日本はもう蚊帳の外なのに仕事だけは割り振られる
アメリカの某紙では「プレイヤーですらない」と酷評されたくらいなのに。
やる気無くすわそりゃ。日本の官僚、アメリカ大統領に振り回されて。
それでも間に合わせようとするのが日本人の美徳なのかもしれない。
結局日本が解析したヒトゲノムは全体のたった6パーセントだった。

運命の日、確かにヒトゲノムの96%の配列は、一度は解析されたことになる。

さて、ここからが問題だった。どうならんでいるのか?
コンピューターによる配列の順番決めが始まった。
のだけれど…どうも生物ってのはスパゲティコード、というより
コピペコードの嵐といえる。誰がこんなもんつなげるんだよ。

それこそコンピューター屋は、
「今日もまた一センチに切られた240メートルの紐、トータルで3kmの長さの紐を
最初から並べる仕事が始まるお…」
というような、かなーり気が滅入る仕事をやらされるハメになる。

すでに人々はヒトゲノム終わったとクリントンが言ってたから
とっくに終わったんだろ?と思っていたのだが、実際は何も終わってなかった。
大体遺伝子がどこにあるかとか分かったのその数年後だぜ。
ゲノム配列だってよーやく並びが確定したのが2006年。(ゲノムプロジェクトおわてる)
2005年によーやっと解析に一区切りがついた。

だが、その頃始まってたHapMapプロジェクト、個人間の遺伝子を調べた
結果から恐ろしい事実が明らかになる。
個人差は想像以上に大きい。もはやこんなデータコンピュータで解析できるか!
個人間で100万塩基長さが違ったりするんだぜ?どーりでつながる筈もないわけだ。
ってことがわかって来て、どっかのコンピュータ屋は最悪だと思っていたが…

コンピュータ屋に止めを刺す次世代シーケンサーが出現したのです。
恐ろしい量の遺伝子断片をひたすら読みまくり、吐き出しまくる装置。
…って遺伝子読む速度が早いのは良いけどまた順番わからねーだろその方式!
コンピューター屋に死ねと言ってるんだな
、そうなんだな!!!

誰が得するんだよこの装置で!…メタゲノム解析として食品関連
環境関連で多分役に立つからそれはそれでいいんだけど。

人間とはなんなのか、理解するまではまだまだ遥かに時間がかかりそうだ。
俺が生きてるうちには無理かもなぁ…

ま、とりあえずデザイナーズチャイルドやら遺伝子差別なんて事態は
当分先の話だと思う。人間の遺伝子はかなり冗長性を持っている。
特別な遺伝子以外の遺伝子が少しぶっこわれても、死んだりしない。

この遺伝子持ってるから優秀、なんて単純なものじゃない。
なぜなら組み合わさって初めて決まってくるからだ。
そしてその組み合わせはほぼ無限大!赤ちゃんには無限の可能性が
秘められている。一部の遺伝子治療以外、人間が遺伝子をいじるのは
正直どこかをおかしくするだけの結果になるのでは?

さて、生物編最終回ですがまだ我々の旅は続きます。

次回は機械編か電子編なんだけど、片側だけでは語れないんだよなこれは…
番外編の前後のお話になるわけなんだけどね。

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